TBSの番組『クレイジージャーニー』を毎回見ています。
特に世界の少数民族撮影旅をしているフォトグラファーのヨシダナギ氏は、妻がファンということもあって渋谷西武で2回行われた写真展にも行ったし、著書『拾われる力』も読みました。
で、昨夜・7月31日はそのヨシダ氏の出演回。
普段はひとつの民族を訪ねて写真撮影をするまでの様子を2週にわたって放送するというスタイルなのですが、昨日は1回で4民族の話をするという「小ネタ集」的な内容でした。ところが…
そのうちのひとつとして登場したのが、中国・チベット自治区の「カンバーチベット族」。
その集落は、普段出てくる少数民族の村とは違い、道路も整備され、近代的な家が立ち並んでいました。
登場した男性は、「今は国の政策もよくなって、いい生活をしているよ」と国を称えます。
男性の娘2人は都会に出て完全に現代的な生活をしていて、見た目は普通の都会の中国人と全く変わりません。ただ、観光客相手に伝統衣装を着て民族舞踊ショーをしているそうです。
そこでヨシダ氏は、「観光民族」というと聞こえが悪いが、そこで若者が自分の民族の文化の良さを再発見し、伝統文化が復活することもあるとその意義を話していました。
もちろん、チベットで中国政府がどれだけの弾圧・虐殺を繰り返し、民族浄化を進めてきたかなんて話は一切出ません。そんな話をしたら、そもそも取材自体できなかったでしょう。
典型的な「本多勝一型・中国の旅」でした。
これだけでもかなり苦々しい気分になっていたところ、続いて番組トリに登場したのがなんと「北海道・アイヌ民族」。
しかも不自然なことに、この番組は地球の裏側までもディレクターがテレビカメラを持って密着するのが売りなのに、取材地が北海道なのにもかかわらず、ディレクターの同行もテレビカメラもなし!
ただヨシダ氏の写真と話だけで進行するという、この番組としては極めて異例なものになっていました。
アイヌの当事者のインタビューなど一切なし。
ヨシダ氏の話の中には、鮭の皮で作った民族衣装の靴を履いて撮影されたアイヌの男性が、撮影後に「足が鮭臭いと言って泣いていた」という、なんだかトホホな話も出て来ましたが、全体としては、今も伝統文化を守って生活しているアイヌ民族がいて、イオマンテもやっているかのような印象で番組が終わっていきました。
この番組は、伝統文化が失われて近代化していく途上の少数民族については、その様子についても余すところなく写していたはずです。
なぜ「アイヌ民族」には普段通りの取材をしないのでしょうか?
ヨシダナギ氏はジャーナリストでも民俗学者でもなく「フォトグラファー」であり、しかもリアルな写真を撮るのではなく、ファンタジックなほどに演出と加工を施して仕上げるという作風です。だから、いい作品さえできれば、その背景などはとやかく言うべきではないのかもしれません。
でも、やっぱりこうやって政治利用されるのかと思うと、ため息しか出ません。
クレイジージャーニーは、「アイヌ民族」にも密着取材して、普段の日常の生活まで細かく写して2週にわたって放送してみろ!